新しく複雑な技術製品が導入される時、適切なサポートシステムをタイムリーに利用できるようにする必要があります。そのためには、プロダクト責任規制を満たし、製品機能の適切かつ最適な活用を確実にするためには、適切なプロダクト監視が必要です。したがって、プロダクトのコスト効率と最適化な運用を確実にするために、情報フィードバックのプロセスが必要になります。複雑な技術システムまたは製品のライフサイクルを通して、サポートコストは初期の調達コストよりもはるかに高くなります。したがって、この仕様は、コスト削減と最適化されたプロダクトの活用のための必要条件です。関連するデータフローと、データを分析してリコメンドする際の情報フィードバックについて説明します。

目的

 S5000F仕様は統合プロダクトサポート(IPS)およびその他のドメインのためにフィードバックされる必要がある情報をカバーするように設計されています。サービス中のデータフィードバックは、プロダクトサポートにおける最も重要な機能の1つであることを念頭に置く必要があります。フリート&サポートマネージャーと技術システムメーカーは、運用およびメンテナンスのパフォーマンスを徹底的に分析できます。

 この分析の結果は、以下の基準になります。

  • メンテナンスとサポートコンセプトの強化
  • 改造・改修活動による製品の改善
  • 高度な運用計画

 運用およびメンテナンスデータのフィードバックによって達成する全体目的は、フリートとプロダクトの可用性の向上と有効性の最適化です。

 さらに、フィードバック情報は、請負業者が製品の一部または完全なメンテナンスを引き継ぎ、製造物責任に関する義務を果たすパフォーマンスベースロジスティック(PBL)契約を実施するために業界が必要とする要件です。

 S5000F単独で、または他のSシリーズまたはIPS仕様と一緒に使用する目的は、オペレーターからの操作および整備データのフィードバックを処理する構造化された方法を採用することです。S5000Fのデータモデル(およびSシリーズIPS仕様の共通データモデル、SX002D)を使用することで、効率的に実施できます。

S5000F開発経緯

開発作業は、AIAASDの代表者の共同議長の下、国際的な専門家チームに2008年に割り当てられました。以下の企業や組織がこの作業に貢献しました:

AgustaWestlandUnited Kingdom
Airbus Defense and SpaceSpain (former Airbus Military) and Germany (former Cassdian)
Andromeda Systems, Inc.USA
BoeingUSA
Dassault AviationFrance
BundeswehrGermany
ESGGermany
OCCAREuropean (based in Germany)
Rolls-RoyceUnited Kingdom
Saab ABSweden
UK MoDUnited Kingdom

 仕様書の最初の草案(Issue 0.1)は、ASDおよびAIAのメンバー企業に対して2013年12月に公式に公開されました。この出版物の主な目的は、関心のある企業や組織の専門家がS5000Fエキスパートチームへの最初のアプローチについてコメントを提供できるようにすることでした。

 2番目の草案(Issue 0.2)は、より広いフィードバックを受取るために、2014年6月に一般公開されました。受取ったコメントをベースとした草案0.3は、2016年3月に発行されました。

 最初の正式リリースであるIssue 1.0は、2016年9月に公開されました。

概要

 S5000Fは、サービス中の基本的なフィードバックプロセス、およびインサービスフェーズで実行されるアクティビティ、およびこれらのアクティビティが適切な実行するために必要な情報を記述します。したがって、フィードバックされるデータはアクティビティに直接関連しており、そのようなアクティビティを行う必要がある場合にその必要性が証明されます。簡単にするために、これらのアクティビティは一般的なユースケースとして要約されており、フィードバックデータはこれらのユースケースに対してマッピングされています。したがって、S5000Fは、実行するアクティビティー(ユース・ケース)を選択し、そのようなアクティビティーを実行するために必要な情報をリストする表を参照することによって、契約時などで使用することができます。

 仕様は20章に分かれて構成され、それぞれの章は特定のフィードバック目的に対応するか、グローバルレベルの情報を示します。

Chapter 1Introduction and general guidance on how to use the Specification
Chapter 2The in-service feedback business process
Chapter 3Feedback data for the purpose of reliability, availability, maintainability and testability analysis
Chapter 4Feedback of data for maintenance analysis
Chapter 5Feedback of safety data
Chapter 6Feeback of data for supply support
Chapter 7Feedback for Life Cycle Cost analysis
Chapter 8Feedback of data for warranty analysis
Chapter 9Feedback of data for the purpose of platform usage and health monitoring
Chapter 10Feedback of data to support obsolescence management
Chapter 11Feedback of data for integrated fleet management
Chapter 12Feedback of data for configuration management
Chapter 13Feedback of data to support the management of service contracts
Chapter 14Feedback of non-predefined information
Chapter 15Data model
Chapter 16Data exchange
Chapter 17Data element list
Chapter 18Tailoring and contracting against S5000F
Chapter 19Data required for the different use cases
Chapter 20Terms, abbreviations and acronyms

他の仕様との相互性について

 S5000Fは他のSシリーズのIPS仕様との最初から相互運用可能であることを保証するために、多大な努力が行われました。

 S5000FはS3000L Issue 2.0、S2000M Issue 6.1、S6000T Issue 1.0 SX000i Issue 2.0およびS4000Pの次のIssueと完全に相互運用可能です。また、フィードバックがグローバルIPSフレームワークで定義されたアクティビティに対応するように、SX000i との調整も行われています。同様に、S5000FはSシリーズ共通データモデル(SX002D)と当初から完全に相互運用可能であり、将来のIssue 2.0の要素も含まれています。他のSシリーズ仕様との相互運用性も監視されており、それらへの対応はS5000Fの将来にわたっての問題です。

 同様に、データ環境は標準のUML技術(ISO 標準 10303、AP239、PLCS に基づく)を使用した詳細な関係モデルによって記述されます。これにより、中期的には、フィードバックデータをIPSだけでなくエンジニアリングとISO STEP規格を使用して統合することができます。目標は、独立したフィードバック仕様を持つのではなく、真のグローバルライフサイクルデータ交換を実現するために、一連のIPS、エンジニアリング、プロダクト仕様として統合することです。

意見・コメント

 S5000Fの現在のバージョンは公式版を公開しているので、任意のコメント、改善のための提案の質問は、S5000F運営委員会に送ることができます。このためには、共通ILS仕様コメントツールに登録し、提案や問題があれば送信します。詳細は第1章を参照してください。

※本ページは、S5000F公式ページのAbout S5000Fを翻訳したものです。

Month: Year:
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SX000i Issue 3.1 統合プロダクトサポート(IPS)のための国際規格(和訳版PDF)
Notes : 一連のSシリーズIPS規格の内で統合プロダクトサポート(IPS)プロセスの互換性及び共通性を確保するために情報、ガイダンス及び指示を提供しています。 2024現在の最新版です。
統合プロダクトサポート(IPS)とSシリーズ国際規格の紹介

このガイドは、統合後方支援(IPS:Integrated Product Support)と、欧州航空宇宙防衛工業会(ASD:Aerospace and Defence Industries Association of Europe)と米国航空宇宙工業会(AIA:Aerospace Industries Association of America)が共同開発した一連のSシリーズ規格の基本的事項の紹介を目的としています。SX000i Issue2.0~3.1の説明を元に、最初にIPSの背景とともに概要の説明を行い、後半で各Sシリーズ規格の概要を紹介しています。
MIL-STD-5048B(USAF) S1000D実装のための空軍ビジネスルール
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Notes : S4000Pは、製品の初期予防整備プログラムを作成するための基礎として、反復スケジュール間隔(PMTRI)を使用してPMTRを開発するための実践ベースの分析方法を提供する。
S6000T Issue 2.0 訓練分析と設計のための国際規格
Notes : 訓練支援の成功は、詳細で包括的な分析と立体設計定義データに基づきます。このデータは、計画立案、決定及び製品訓練の実施と支援のための確かな基礎を提供します。それゆえS6000T の目的は、製品訓練の適切かつ効果的な納入のために全てのレベルの分析と設計を定義することです。
S5000F Issue 3.0 インサービスデータフィードバックの国際手順規格(和訳版PDF)
Notes : インサービス・データ・フィードバックの収集は 、稼働中のサポートの最も重要な機能の一つで す。これにより、フリート・サポート・マネージャと テクニカル・システム・メーカーは、運用と整備のパフォーマンスを徹底的に分析し、グローバル・サポート・サービスを向上させることができます。
S2000M Issue 7.0 部材管理のための国際規格(和訳版PDF)
Notes : 本翻訳はASD またはAIA の許可を得ています。ただし、これはASD/AIA の公式な翻訳ではなく、ASD/AIAは、本翻訳の正確性に関していかなる表明も行っていません。本出版物の公式な原本(英語版)は以下のASD/AIA S2000M サイトから無料で入手可能です。本書はあくまで、理解を助ける参考翻訳としてご活用ください。
S3000L Issue 2.0 後方支援分析(LSA) 国際手順規格(和訳版PDF)
Notes : 後方支援分析(LSA)は、製品支援の最も重要なプロセスの一つである。 それは次を行うための主要なツールです: - 整備性信頼性、試験容易性に関連して製品の設計を行い、ライフサイクルコストを最適化します。 - インサービス運用中の意図した使用において製品を支援する全ての要求される資源を定義します。 S3000Lは、航空宇宙、防衛及び民間製品のライフサイクル中にLSAのパフォーマンスを支配するプロセス、全般要求及び関連情報交換を定義します。
SX004G 統一モデリング言語(UML)モデルの読者ガイダンス(和訳)
Notes : Sシリーズ統合製品支援(IPS)規格のUMLモデルの読者ガイドであるSX004Gは、共通データモデル(SX002D)を含むSシリーズIPS規格用に作成されたUMLクラスモデルを読んで理解する方法を説明するドキュメントです。