標準化の必要性
◆ライフサイクルを通じた「経費の最適化」のためには、プロダクトサポートに焦点を当てたデータ戦略が必須
◆複数企業・多国間のプログラムでは、共通のデータ標準なしでは、設計・開発・製造は複雑、高額、長期的となり、間違いが発生しやすくなる
ASD/AIA Sシリーズ概要
NATO presentation by TDW 2021.1.27
Sシリーズの全般概要についての説明 (約20分)
Sシリーズの動向
欧州では、戦闘機等の国際共同開発が行われるなどLSA(Logistics Support Analysis)分野で標準化検討が継続/拡大し、英国国防省のDef Stan 00-60規格として取り上げられ、改良されています。
現在、データ国際規格は、最も体系的/組織的に民間団体であるASD/AIAのSシリーズとして、デジタル設計時代の新国際規格として民間主導で集大成されつつあります。
Sシリーズは以下の区分に分けて規格書が出版・検討されています。
SX000i | 統合プロダクトサポートのための国際規格(全般) International specification for Integrated Product Support (IPS) |
S1000D | 共通ソースデータベースを活用した技術刊行物のための国際規格 International specification for technical publications using a common source database |
S2000M | 部材管理のための国際規格 International specification for material management |
S3000L | ロジスティクスサポート分析(LSA)国際手順規格 International procedure specification for Logistics Support Analysis (LSA) |
S4000P | 予防整備の開発及び継続的改善の国際規格 International specification for developing and continuously improving preventive maintenance |
S5000F | インサービスデータフィードバックの国際手順規格 International specification for in-service data feedback |
S6000T | 訓練分析と設計のための国際規格 International procedure specification for training analysis and design |
① ASD SX000iの概要「統合プロダクトサポート(IPS)」
SX000i規格は、ILS管理者や実務者がILS規格のSシリーズを使用する際のガイドとなり、またILS規格協議会やILS規格運営委員会(SC)、ワーキンググループ(WG)が規格を管理し、将来的に発展させるための指針となるものです。
SX000iは、グローバルなIPSプロセスのためのフレームワークと、Sシリーズの各規格を選択し使用するためのガイドラインを提供しています。SX000iは、グローバルな規格ガバナンス、およびSシリーズSシリーズ規格の統合と相互運用性を確保するために使用されるメカニズムも定義しています。
2020年以降、名称をILS(Integrated Logistics Support)からIPS(Integrated Product Support)に改められました。
※SX000iは「エス・テンサウザンド・アイ」と読まれています。
② ASD S1000Dの概要「技術刊行物」
S1000D規格は、XMLを用いて技術刊行物を作成し、その情報を「データモジュール」としてCSDBに格納するためのルールとガイダンスを示す国際規格です。データモジュールは通常、1つの整備手順などを含む小さなXMLファイルで成り立っています。
この規格は、"write once, use many "というコンセプトを前提にしており、そのために、1つまたは複数の方法で再利用や転用が可能なデータモジュールとなっています。構造的な整合性と一貫性は、さまざまなタイプの情報に対する26のXMLスキーマによってサポートされています。
③ ASD S2000Mの概要「部材管理」
S2000M規格は、S1000Dプロセスで定義された技術刊行物としてIPDP /IPCを作成するためのプロビジョニングデータと図を提供します。
S2000Mプロセスに従って生成および保存されたプロビジョニングデータは、S1000Dデータモジュールに直接変換できるため、データの一貫性が確保され、最適なLCCを実現します。この規格により、2つ以上の当事者(例えば、請負事業者と顧客)の間のビジネス関係を標準化します。
④ ASD S3000Lの概要「ロジスティクスサポート分析(LSA)」
S3000L規格は、技術的に複雑で製品寿命が長いプロダクトを運用するために、適切なサポート環境の定義に使用されるプロセスと分析活動を記述しています。この規格の広範な手順のChapterの補足として、対応するデータ環境は、標準的なUML技術(ISO規格10303-AP239, PLCSに基づく)を使用した詳細なER(エンティティ・リレーション)モデルによって記述されています。
⑤ ASD S4000Pの概要「予防整備と継続的改善」
S4000P規格は、予防整備の開発と継続的改善を対象としています。
新プロダクトまたはプロダクトバリエーションでは、エンジニアリングサポートを提供する整備性の専門家によって、意図したプロダクト設計の整備性が評価されなければなりません。また、他のプロダクトで蓄積された稼働実績も考慮しなければなりません。
⑥ ASD S5000Fの概要「インサービスフィードバック」
S5000Fの範囲は、サービス中の運用者からOEMまたはメンテナーに、またはその逆に情報をフィードバックすること、並びにプロダクトサポートの改善を目的としてそのような情報を他の規格にフィードバックすることです。S5000Fの主なプロセスは、インサービスデータフィードバック情報と、プロダクトのライフサイクルの運用フェーズで行われる活動に焦点を当てています。
S5000Fは、単独で、または他のSシリーズ規格と共に使用され、関係者間で運用と整備データのフィードバックを取り扱うための構造的な方法を定義しています。
⑦ ASD S6000Tの概要「訓練分析と設計」
S6000T(訓練分析と設計のための国際規格)は、計画立案、決定及びプロダクトサポート訓練の実施のための確実な基礎を提供するため、プロダクトサポート訓練のための全てのレベルの分析と設計を定義することです。
当初は、訓練情報の生成手順は、S3000Lの一部(Chapter)として計画されました。しかし、プロダクトサポート訓練の重要性は、とりわけS3000Lからの出力を用いた分析を必要とし、別の規格が必要であると見なされ、独立することになったものです。
最新のデジタルエンジニアリングにおいて、Sシリーズの適用は「設計」段階から始まります。
データの標準規格であるSシリーズは「Design For Support(ロジスティクスサポートのための設計)」のステージはカバーしませんが、「Design The Support(ロジスティクスサポートを設計)」ステージから適用します。
<IPSの3つの主要ステージ>
Sシリーズでは、設計凍結前に必要なプロダクトサポート分析(PSA)をカバーしていないことに注意が必要です。そして、Sシリーズはデータベースではありません。また、プロセス(Activity)の規格は、主としてTA STD 0017Aに書かれているため、Sシリーズ適用時にはあわせて参照する必要があります。
Sシリーズは、データ交換の規格(フォーマット)を規程しますが、ソリューションではありません。ロジスティクスプロダクトデータリポジトリの作成などについては、他の技術やツール、ソフトウェア等が必要です。
<デジタルエンジニアリングとIPS&Sシリーズ>
※本サイトでは、以下のスペックについて特に詳しく説明します
◆これらのドキュメントを和訳しました。参考にダウンロードしてお使いください。
(本翻訳は、ASDの許可を得ていますが、和訳をASDが監修したものではありませんので、翻訳の不正確さはあります。あくまで、原文(英語)理解の参考としてご活用されることをご承知おきください。)