Transition to New F-35 Logistics System Hits Headwinds(原文:NDIA National Defense 2021.6)

BY JON HARPER

F-35に点検・整備を施す整備員

 新しく改良されたF-35ジョイントストライク戦闘機のロジステックシステムへ、移行しようとする取り組みは、資金調達の規制やそのほかいろいろの問題の為に、現在遅延に直面している状態です。こうした遅延(後退)状態は、このF-35プログラム自体が、その運用と保守整備を改善し、それらの経費をコントロールできるようにしなければならないというプレッシャーにさらされていることを示しています。

 従来のオートノミック・ロジスティクス・インフォメーション・システム(ALIS)は、本来F-35の運用(オペレーション)、運航計画(ミッションプランニング)、サプライチェーン管理、及び保守整備業務を支援する為に設計されたものですが、その当初から、長年に亘って諸々の問題に悩まされ続けてきています。

 米国GAO(米国会計検査院)で、防衛機能管理担当ディレクターを務めるダイアナ・モラー氏は、“このシステムは、ユーザーフレンドリーではなく、且つ約束されていた整備関連管理機能も提供できていません”と述べています。

 電子ログブックに関する問題は、すでに文書で報告されています。“こうした電子記録(Electric Reords)はALIS内にあるはずで、部品交換が必要な場合には、整備担当者へその警告を発することになっています“と、モラー氏は、4月に開催された下院軍事委員会のレディネス並び空軍・陸軍戦略小委員会の場で、証言しています。”しかしながら、ALIS内の電子記録の誤り、記録の紛失、または破損等が、現場飛行部隊の日常業務に引き続き影響を与えており、こうした状況が、健全(飛行可能)なF-35航空機を不必要なグラウンディングさせたり、飛行中隊レベルでは、電子記録機能の問題を回避するための処置対策として、飛行中隊レベルでは本来ならばする必要ない手書きによる記録をつけざるをえない状況になっている“と報告しています。

 F-35ジョイントプログラムオフィス(JPO)のプログラム執行責任者である、米空軍のエリック・フィック中将は、問題の元凶は、オートノミック・ロジステック・インフォメーション・システム(ALIS)であると明言しています。“ALISは、たくさんの欠陥が報告され、技術的に多くの課題を抱えている複雑なシステムです”と、フィック中将は、公聴会の証言で述べています。さらに、15年以上も以前の、時代遅れなALISのシステムアーキテクチャーでは、最新のテクノロジ―、最新のソフトウエアー開発手法、サイバーセキュリティの強化において、十分に活用することができない状況です“と付け加えています。

 昨年、当局は、オペレーショナル・データ・インテグレテッド・ネットワーク(ODIN)へ移行する計画を発表しています。このODINは、最新のハードウエア、アーキテクチャ、ソフトウエア開発手法、データ環境&プラットフォーム等を採用できる、使いやすい(ユーザーフレンドリー)、統合的情報システムであることが要求されてきました。このプログラムへの移行は、F-35、並びALISの元請け業者であるロッキードマーティン(LM)の支援(承認)を受けて、JPOが主導します。ロッキードマーティンの航空宇宙部門の執行VPである、グレッグ・ウルマーは、“私達の共通のゴールは、引き続き性能を改善し、ハードウエアーの最小化を図り、要求される労力を軽減させ、全般的使い勝手の良さと、その機能を向上することです”と述べています。

 “ODINの狙いは、メンテナンス作業、在庫管理の効率化、それに伴う即応性(Readiness)の向上です“と付け加えています。移行計画の発表以来、いくつかの重要な進展が見られました。昨年末に、要求機能項目に関する同意声明と共に、ユーザーアグリーメント契約が実施されています。このアグリーメントで、ALISからODINへ移行するために必要な活動要件が特定され、開発活動中にも、ODINユーザーがどのように関与し続けるか等についても明確化されています。さらに、フィック中将は、”データ取得の権利、頻繁にソフトウエアーを受領できる権利、最新のソフトウエアー開発手法が活用できる、正当なデータマーキングを取得できる契約を成立させている”と述べています。ロッキードマーティンの広報担当者は、電子メールで、“ODINソフトウエアは、DevSecOpsに関する米国政府のベストプラクティスに準拠した最新ツール、技術、そして標準化を活用して作り上げていると述べています。この会社(LM)は政府が管理しているデータ環境の中で、データ統合を実証してきたと、フィック中将は述べています。

 ロッキードマーティン製の新しいODINハードウエアキットは、9月にアリゾナ州のユマ海兵隊航空基地にてテストされています。ALISとODINソフトウエアの両方を活用できるこのキット(ハード)は、従来のSOUv2ALISハードウエアよりも75%小さく、90%軽量で、30%安価になると予測されています。JPO並びロッキードマーティンのオフィシャルによれば、これにより、単一のキットで、複数の飛行隊を受け持つことが可能になり、調達コストとシステム管理経費の大幅な削減が期待されるとのことです。

 しかし、フィック中将は、彼が2020年の当初コミットした、非常にアグレッシブなタイムラインでALISからODINへ移行する取り組みは、すでの座礁に直面していると述べています。JPOは、ODINが、2022年の末までに、ODINが完全な運用能力をそなえて、このシステムが完全に展開できることを目指していました。昨年私達が学んだことは、コミットされた期間での移行は不可能であることだと、彼は、議員たちに報告しています。“私達は、ALISからODINへの移行過程で、ALIS機能を廃止することの複雑性を過小評価していました。それは、簡単にスイッチさせる作業ではなく、進化させる作業だったのです。

 もう一つ別のセットバック(問題)は、議会が2021会計年度にODINの研究、開発、テストと評価のための資金を割り当てた際に発生しています。割り当てられた資金は、必要な金額、要求した金額よりも、42%少ないものだったからですと、フィック中将は発言しています。その為、この移行プログラムは、一時的に中断せざるをえず、ALISから新しいシステムに移行する為の新しい戦略を立て直しする必要がありました。当局のオフィシャルは、この新しい戦略(アプローチ)によって、一時停止がどのくらい続くか、また移行期間がどれくらい長引くかについては明らかにしませんでした。

 移行の活動を包括的に管理し、導くためのフレームワーク(アーキテクチャ)プランを開発する作業が進行しています。フィック中将は、“JPOは、利用可能なリソース及び、ユーザーからの要求をとり入れて改善された新しい戦略に続いて開発計画を更新していく”と述べています。さらに、”私達が導入するODIN構造を確実にしていくためにも、迅速にALISの機能を改善し続ける必要があります。このODIN構造は、ハードウエアの観点から、データ環境の観点から、ソフトウエアの観点から、そしてユーザーが望むものという観点から構築していく必要がある“と議員たちに語っています。

 JPOのスポクスウーマンであるローラ・シール氏は、当局が移行作業を完全に停止していないことを指摘しました。彼女は、国防総省(または、ナショナル・デフェンス・ニュース)へのメールメッセージで、“JPOは、政府サイド、業界パートナーサイドの両方で、開発活動のペースを遅らせていますが、停止はしていません”と述べています。私達が提唱する“戦略的一時停止”が意味するところは、ALIS をODINへ進化させるために必要なすべての要素、例えば、最新のハードウエア、アーキテクチャ、ソフトウエア開発手段、データ環境とそのプラットフォーム等を全体的に見直すということです。彼女は、“プログラムオフィスは、包括的な移行戦略が成熟するにつれて、新しいODINハードウエアキットを導入し続け、活用していく予定を立てている“と述べています。

 今年後半には、さらに多くのキットが導入(展開)されてくる予定です。“どのような追加要求のODINハードウエアが必要とされるかまだ決定されていませんが、ロッキードマーティンは、JPOと提携して、設計、テスト、フィールディング、整備に必要とされるODINハードウエア機能をサポートしていきます“と、同社の広報担当者は、電子メールにて発表しています。”ALISからODINへの移行が進むにつれて、ロッキードマーティンは、機会あるごとにサポートを提供し、ODINへの要求事項が、JPOによって定義づけされるたびに、そのサポートを提供するようにします。“

 米空軍、F-35統合オフィスディレクターである、デイビッド・アバ准将は、“プログラムの遅延は、空軍のF-35の可用性(availability)と、可用性を生み出す経費の許容範囲(affordability)の課題に直接影響をもたらしている“と述べています。可用性(Availability、可動率)から見れば、ALISからODINへの移行は、最も重要な要求事項とみなされています。”現在のロッキードマーティンのALISアーキテクチャでは、オペレーション機能、デプロイメント能力が制約されています。“移行の為の資金不足は、プログラムが直面している多くの問題(限られた予算の範囲内で実行可能にしていく努力へのプレッシャー)の一つに過ぎない”と付け加えています。

 フィック中将は、“今後数年間を必要とする移行過程に関する防衛プログラムで、ALISとODINの双方に、合計で4億7100万ドルを投資する計画である”と語っています。ALISプログラムに、ペンタゴンはすでに、約10億ドルを投入しています。オブザーバーは、この取り組みについて懸念を表明しています。“国防総省は、ALISに代わるODINへと重要な一歩を踏み出しました。これは非常に心強いことと受け止められますが、その取組みには、完全(最善)な戦略が欠けており、ALISを除外し、ODINを完全に組み入れるには、まだ数年を必要とするだろう”と、マウラ―氏は語っています。

 2020会計年度の年次報告書で、ペンタゴンの’運用テスト及び評価’オフィスの部長は、ソフトウェアとハードウェアの限定的開発テストの項目内容について強い懸念を表明しています。この項目に関する懸念として、“この通りに実行すれば、システムとでデザインの欠陥が、現場にリリースされるまで発見されないままになる可能性があり、大幅な手直しとパッチの適用が必要となってしまう“と警告しています。

 JPOは、ODINをサポートする為に、ソフトウェアの更新を頻繁にリリースすることを予定してます。“新しいソフトウエアの導入頻度が増えると、サイバーセキュリティ関連のテストチームが、各々のアップデートを、徹底的に評価していく能力を低める可能性があることも”レポートの中で記述しています。米政府監視プロジェクトに所属する軍事研究員のダン・グラジェ氏は、“ODINがALIS同様にクラウドに存在するという理由で、重大なサイバー脆弱性を内包する可能性がある”と警告しています。グラジェ氏はまた、 ‘岐路に立たされたF-35?’と題する、2月に発表されたPOGOレポートの中で、ALISは、“新しい後方支援システムが、ほどほどの成功を得られるように、低い評価基準を設定している”と述べています。“ALISが導いた大混乱の状態からしてみれば、どんなことでもそこからの回復、改善と判断されそうですが、ODINは、すでに開始当初から躓いているような状況にある”と彼は言及しています。“F-35プログラムの歴史的観点から見れば、本当に使い勝手が良く、安全な整備、後方支援態勢が提供されてくるのかどうか、その判断を下すことは非常に困難だ”とも語っています。米下院軍事委員会の議長を務める、民主党議員、ジョン・ガラメンディトは、“ODINは、問題を多く抱えたALISシステムを、ただブランディングし直しただけなのかどうか”と尋ねています。彼は、公聴会で、“単に名前を変更して、同じ問題を受継いだだけですか”と質問しています。“私達が受取った情報によると、この移行は、素晴らしい名前の変更とは受止められても、それは実際には活動(機能)していない”とも発言しています。

 この発言に対して、フィック中将は、次のように応戦しています。“私達が意図するODINは、単にALISをリブランディングすることではありません。” “ODINは、最新のハードウェアベースラインであり、新しい統合データ環境で活用される新しいアプリケーションであり、ユーザーフレンドリーなユーザーインターフェイスで構成されるものです。”こうした新しい要素で構成されるODINへ移行は、私達“JPO”が自ら管理し、コントロールしながら、その移行を実現していくものです。“

 マウラ―氏は、いくつかの有望な進歩があったと述べ、明確な機能要求を示すドキュメント(the capability needs statemnt)の重要性を強調しています。“その書類には、ALISの時には存在しなかったODINのパフォーマンス測定義務が含まれています“と彼女は伝えています。”しかしながら、ODINが最終的にどんな設計になるのかといったような根本的疑問はまだのこっています“とも付け加えています。”クラウドの活用手段、ソフトウェア開発モデル、ユーザーからのフィードバックを反映させるための手段、その他ALISがもたらした根本的課題のいくつかについては、まだ未回答の質問がたくさん残っています。私達は、慎重ながらも楽観的ですが、これからもスマートに懐疑的であり続けるつもりです。“

 ミッチェル航空宇宙研究所のダグラス・バーキー事務局長は、F-35の後方支援業務をアップグレードする取り組みについて称賛し、その取り組みが成功するだろうという楽観的な見方を示しています。彼は、“航空機をサポートするシステム(ODIN)が、適切であり、安全で、費用対効果が高く、ポータブル(Transfrable)で、実行可能で、抵抗力(いろんな問題に対してResilient)を持てるように進化させることが重要です。ODINは、最も近代的なアプローチです。そしてこのことは、非常に重要なことです”と述べています。バーキー氏は、このプログラムを批判しながら、その移行への取組み(AILSからODINへの進化)に必要な資金をカットしようとしている議員を大いに批判(叩きのめ)しています。“これは、国会議事堂で、巧みな話術を用いて、本来必要とするサポートを提唱しながらも、その土台となる貴重な支えを切取ってしまうようなもので、そんなことはするべきことではない”と言及しています。“移行は遅れている状態で、依然としてスピードを必要としている、こうした状況で、JPOやその他関係各組織は、ODINへの移行リスクへの対応は避けるべきではない”と彼は述べています。さらに、バーキー氏は、“近代化しないことや、移行への活動を遅らせることの方が、ただ早くやり遂げてしまおうとするよりも、リスクがあります“と語り、この移行プロジェクトは、ロケットサイエンス(トップの科学者でも解決しにくい難題)ではありません、これはすべて解決可能な課題です”と付け加えています。

NDIA JUNE 2021 • NATIONAL DEFENSE(翻訳:エヴァアビエーション)