後方支援

 ILIAS後方支援(Logistics)モジュールは、組織に導入されるあらゆる物資のサポートライフサイクル全体をカバーします。これらの物資には、消耗品や修理可能品、ロット管理されている、またはシリアルナンバーが付けられているアセットなどが含まれます。このモジュールでは、単純な消耗品から複雑な装備品まで、あらゆる種類の防衛関連物資をサポートすることができます。

 ILIASは、(フリート)構成の管理、すべての整備レベル(修復整備予防整備、予知整備、改修)、在庫管理、調達、サプライチェーン管理、移動、輸送、資産管理を含む廃棄処分や予算管理をサポートしています。

 ILIASは、複数の地域やタイムゾーンで活動している広範囲に分散した拠点の運用をサポートする機能を提供しています。また、接続された運用環境と切断された運用環境の両方に対して、NATOの単一拠点(single depot)コンセプトに対応しています。ILIASシステムは、後方支援と整備を最小限に抑え、応答性の高いリーチバック(reachback)を通じて支援を強化する機能と利点を備えており、永続的に運用を維持することができる真の派兵・配備機能を提供します。

 既存のクライアントにサービスを提供するにあたり、ILIAS COTSパッケージは、国際軍事規格を遵守しながら、防衛固有の後方支援IT要件向けに改良を重ね、成長してきました。これにより、現在では、あらゆる防衛組織に適合し、迅速かつ確実な実装に対応し、効率的で手頃な価格のシステムを防衛組織に提供しています。

 多くの防衛向けソリューションは整備と補給を別々のアプリケーションでカバーしていますが、後方支援モジュールではそうしたアプリケーションが完全に統合されています。後方支援のすべてのプロセスが円滑にサポートされるため、軍に関与するすべての人々が事実をリアルタイムで評価することができるようになります。どこに何があり、どのような状態なのか、過去に何が起こったのか、そして次に何が起こると予想されるのかを、常に把握することが可能です。

コード化と識別

 このモジュールは、単純な低コストのアイテムから複雑な高価値アセットに至るまで、システムおよび物資のコード化と識別をカバーしています。ILIASは、部品番号/製造元の組み合わせによる識別と合わせて、NATOの標準コード表記も追加設定なしでサポートしています。

 物資には、消耗品や修理可能品、ロット管理されている、またはシリアルナンバーが付けられているアセットなどが含まれます。当社のシステムはまた、ユニフォーム、弾薬、燃料、不動産などの特殊な物資をそれぞれの特定のデータ要素を用いて記録することができます。

 NSN(NATOストック番号)に関しては、更新(新しいNSNへの変更)、置換え(他のNSNによる置換え)、融合(複数のNSNを1つのコードに統合)など、管理を全面的にサポートしています。また、お客様のご要望に応じて、NSNコードを参照することなく、ロジスティクス番号として管理することも可能です。

 部品番号は、製造元のコードと組み合わせて一意に定義されます。部品番号の更新とその適用性は、全範囲に定義されます。

構成管理

 構成管理(Configuration Management)モジュールは、ライフサイクル全体を通して構成を記録および変更するために必要なすべての機能を提供します。これらの構成は、他のモジュールが使用状況を登録したり、さまざまなタイプの整備を予測するために使用されます。

 構成管理モジュールはソフトウェアの機能中心部であり、ILIASトランザクションでサポートされているすべてのイベントをコントロールします。兵器システムのフリートの構成は、特定の階層(ツリー)または分解構造に従って構築されます。

 構成管理モジュールでは、3種類の分解構造を使用しています。レベルの数に制限はありません。このため、このソフトウェアは複雑なシステムに対しても独自に適応できます。

  • まず、装備品は「機能構造」と呼ばれる理論的な分類で記述されます。これは、兵器システムや装備品を仮想的に表現したものです(例えば、ヘリコプターの主エンジンの燃料ポンプ機能)。機能の名称変更や置き換え、また、特定の機能がサポートするサブコンポーネントの数量を定義することができます。
  • 第二に、特定の機能(例えば、燃料ポンプ)に基づいて「材料構造」が定義されます。これは、「適用性」と呼ばれ、定義されたアセット内で特定の機能を果たすことができる装備品の特定のタイプ(燃料ポンプはタイプ1、またはタイプ2バージョン3とすることができます)を指します。この関係を定義することにより、(条件付きの)互換性が定義されます。
  • 第三に、アセットは装備品の種類とシリアル番号によって一意に識別され、実際の「物理構造」として構築されます。この物理構造は、理論構造および適用構造で指定された制限と組み合わせに従っています。このようにして、実際のフリートが可視化され管理できるようになります。このソフトウェアでは、シリアルナンバーの有無に関わらずコンポーネントを管理することが可能です。
図12:構成レベル

アセットの追跡とステータスの把握

 ILIASは、組織全体のアセットの可用性の概要を示し、後方支援状況、整備状況、搭載部品などによって、各アセットの運用状況を表示します。

 当社のシステムは、アセットの全ライフサイクルを追跡します。構成変更およびパフォーマンスデータはオンラインで登録されます。アセットのパフォーマンスデータは分解構造を介して構成に反映され、個々のコンポーネントの使用状況、整備要件、および残存能力を追跡します。

 アセットとそのコンポーネントに実行されたすべての運用/整備活動はシステムに保存されており、アセットのライフサイクルと履歴の全概要を確認することができます。交換可能なコンポーネントは、修理センターで整備され、修理後に保管され、その後、別のアセットで再び就役させることができます。

整備基準の定義

 MROモジュールは、整備関連のすべての活動をサポートする包括的な機能を提供します。このモジュールは、計画外整備(修復整備)、計画整備(予防整備)、および複雑な改修プログラムの作業指示管理をサポートします。また、HUMS機能によってセンサーデータを読み込んで処理し、予知整備活動を促します。

 ILIASは、作業指示サイクル全体を管理し、作業指示書を作成、準備、計画、実行、認証、および完了する機能を提供します。必要に応じて、ペーパーレスの作業場環境を構築するためにも使用できます。

 繰り返し実施する修復整備であっても、予防整備や改修作業であっても、すべての場合において、以下の項目を含む作業指示書で整備業務は定義されます。

  • 必要なスキル
  • 指示
  • 物資候補リスト
  • 予測作業量
  • 必要なツールと機器(T&E)
  • 必要な設備

 ILIASは作業を予測することができ、そうした予測を人的資源、物資、T&E、設備の要件にまで反映します。

繰り返される修復整備

 繰り返し実施される修復整備では、特定の種類のアセットに対して「ニーズコード」と呼ばれるコードを定義することができます。例えば、F-16戦闘機に対して「硬着陸」、メルセデスGクラス車両に対して「フロントサスペンションの故障」などを定義できます。不具合が発生した際にこのニーズコードを選択すると、ほぼ完成している作業指示書が作成されます。ニーズコードを定義する際は、時間をかけて改善された分析も考慮に入れることができ、「1回限り」の改善ではなく、部隊全体ですぐに改善が実施されるようにできます。

予防整備の定義

 兵器システムの予防整備は、製造元の技術マニュアルに詳細が記載されています。構成の該当部分(最高レベル、モジュールレベル、コンポーネントレベル、サブコンポーネントレベル)と、暦日数、飛行時間、発射回数、移動距離などのカウンターに関連付けられて、さまざまな作業パッケージが定義されています。

 カウンターの閾値に達すると、作業指示が必要になります。ILIAS には使用計画も含まれているため、ILIAS は今後の作業量を予測し、必要品を踏まえて在庫レベルの管理などを行います。これにより、アセットの可用性とリソース(人材、物資、資金)とのバランスが最適化されます。

改修の定義

 改修についても、製造元が定めた基準に基づいて作業パッケージを定義する必要がります。改修作業パッケージは、フリートまたはその一部に適用されます。作業パッケージは一度定義され、フリートの該当する個々のアセットに関連しています。改修作業指示は、ILIASによって生成され計画されます。

作業指示管理

作業指示の生成

 検査時やミッションのディブリーフィング(結果報告)時の所見に基づいて、技能者は不具合を記録することができます。不具合が記録されると、該当アセットに関連する修正作業のオープンリクエストにつながります。整備工場長、計画担当者、権限のある技術者は、作業リクエストを審査、承認、作成することができます。作業リクエストは作業指示に変換され、必要な情報が追加されて完成します。不具合を記録する際や作業指示を作成する際にニーズコードが選択されている場合、事前に規定された基準がこの作業指示に対して適用されます。

 予防整備の場合、整備作業に関する閾値に達すると作業指示が自動で作成され、この作業指示は計画担当者に設定に応じて表示されます。例えば、計画担当者が開始予定日の4週間前に作業指示を確認したい場合、ILIASはフリートの実際のステータス、計画使用量および平均使用量を監視して、どの作業指示がアクティブ状態に変更するかを特定します。

 改修の場合、個々のアセットへの適用可能性も含め、改修がILIASで定義された後に作業指示は作成されます。アセットごとに計画準備が整った作業指示書が作成されます。

作業準備

 作業準備の際、ダウンタイムの改善とリソース利用の最適化のために合理的な場合には作業指示を組み合わせることができます。必要に応じて、自動作成された作業指示書に詳細を追加することも可能です。

作業管理および計画

 計画担当者とスケジュール調整者は、計画上の制約を踏まえて作業指示を計画、承認、結合、発行することができるため、整備工場レベルでの活動を最適化することができます。

 ユーザーが装備品の履歴情報に記入して管理し、その後関連する修理や作業リクエストを生成することで、作業指示はフォローアップ/クローズされます。作業指示の履歴情報には、使用されたリソース、故障コードなどの技術データ、コスト情報などが含まれます。

図13:作業指示計画ボード

 計画担当者は、時間的制約に対する作業量、他のイベントや作業指示との連携、作業指示のグループ化、優先順位付け、リソースの割り当て、制約下での自動スケジューリング、ネットワーク関連の作業指示(オーバーホールなど)のPERT/CPMスケジューリングなどを最適化することができます。

作業の実行

 防衛業界におけるこの種の後方支援管理システムは、データの取得が多くの場合、比較的時間が経ってから行われるという重大な欠点があります。情報取得の遅れは、組織の敏捷性が損なわれるという代償を伴いますが、最も影響が大きいのはデータ精度の損失です。人間が帰宅前に管理を確定をしても、最新の経過を選択することができません。

 ILIAS Guideでは、技術者がモバイルデバイス上で割り当てられたタスクを選択すると、ジョブガイドから対応するステップが表示されます。ステップには「チェック」が付けられ、リアルタイムで詳細に時間が記録されます。監督者は実際の進捗状況を確認し、必要に応じて即座に介入することができます。技術者は不具合を発見した場合、必要に応じてメモと写真を添えてILIAS Guideに送信します。このように、データ入力の適時性と精度の両面が大幅に改善することで、フリートから価値を生み出すことができます。

 モバイルデバイスをワイヤレスネットワークに接続できない場合、作業終了後にクレードルに保存しておくことができます。この場合、適時性に関しては不利益が発生しますが、データの精度は依然として大幅に改善されます。

図14:ILIAS Guide

整備要件の策定

 このモジュールは、装備品の整備を管理するために必要なさまざまな機能を提供し、運用予算に基づいて運営されています。このモジュールには以下の機能が含まれています。

  • 使用計画に基づく全体的な整備計画の作成
  • 運用予算計画に基づく個別の使用計画の作成
  • 改修指示の作成、準備、開始
  • 改修指示のフォローアップ
  • PTI(Proper Time Indicator / Counter)の記録
  • 使用計画と残存寿命に基づいた整備実施期限リストの作成
  • スタッガーライン(固定整備スロット)に基づいた使用計画の調整
  • 材料構造のフォローアップと修正
  • 設置/撤去の管理と構成の更新
  • 補給モジュールや調達モジュールとの連携による、補充品/予備品の予約、呼び出し、発注

ライフサイクルマネジメント

 物理的な構造を持つコンポーネントはそれぞれ、寿命を測定するための独立した特性(カウンターと呼ばれる)を持っている場合があります。当社のシステムは、絶対カウンター、相対カウンター、増分カウンターを管理し、コンポーネントの耐用寿命を追跡し、現在の寿命と将来の計画に基づいて整備や物資の必要性を予測します。

 例えば、航空機が2時間飛行し、3回着陸し、飛行中に最大6Gの負荷がかかるミッションを想定した場合、ミッションのフィードバック情報を登録する際には、飛行時間でカウントされる航空機コンポーネント(主要エンジンなど)はすべて2時間分更新され、着陸回数でカウントされるすべての装備品(着陸装置、翼など)は3回分更新され、Gパラメータは後の劣化計算のために記録されます。

 ある程度使用されたコンポーネントが別の機体に移される場合、既に消耗した耐用寿命に加えて、次に搭載される機体の消耗寿命のデータも継承します。

物資とサービスの要求

 物資は、消費するため、整備作業指示のため、貸し出しのため、あるいは、ミッションやその他の軍事目的で直接使用するために要求することができます。ILIASは、プロジェクトや個々の作業指示のためのストックの確保をサポートしています。サービスの要求に関しても、物資と同様に全面的に対応しています。

 当社システムはすべてのローカルな要求を毎日自動的に監視し、個々の要求に応じることができるよう物資の再分配を提案します。全体の在庫が不足し、組織の即応性が確保できない場合、ユーザー定義のパラメーターに従って自動的に予備部品の調達を開始したり、通知を行います。

 兵器システムの初期導入時には、新しい物資の完全なカタログが、関連するNATOストック番号(NSN)と商用(PN-MFR)コード情報とともに当社システムに読み込まれます。

在庫管理

 ILIAS Inventory(在庫管理)モジュールは、在庫を把握し、倉庫を管理するためのフル機能を備えています。

 ILIASは、グローバルな(複数サイト)在庫量最適化、ローカルな在庫管理、購買など、NATO標準の充実した在庫管理システムを提供しています。

 グローバル在庫管理では、設定を変更することができる高度な在庫モデルを使用して、予測される整備要件や過去のトレンド分析に基づいて、複数のサイトにわたる在庫の配分を最適化します。

 購買請求は、調達モジュールとの連携によって、自動で開始されます。購買請求が自動的に発注となるのか、あるいは購買部門による手続きが必要となるかは、しきい値で設定することができます。在庫システムは、プロジェクトや個々の作業指示のためのストックの確保をサポートします。必要な機能は以下の通りです。

  • 倉庫管理
  • 在庫管理
  • ベンチストック管理
  • 承認済み・割り当て・実際の在庫の管理
  • 移動の登録
  • 在庫レポート

 在庫管理モジュールは、整備管理モジュールおよび購買モジュールと完全に連携しており、後方支援チェーンにおける完全な「プル・スルー」アプローチを可能にします。この連携により、特定の作業のために在庫アイテムを予約して呼び出したり、作業指示の候補リストを作成して実行したり、予想される要件のうち不足する部品について警告を出して予備品の再分配(複数サイト)や部品の調達を開始したりすることができます。

 ILIASは軍向けに設計されているため、POL、弾薬、医療品、衣類などの専門分野に完全に対応しています。

物資の補充

 補充は、消耗品・予備品だけでなく、修理可能な軍需品についても、物資予測、安全在庫、再発注点に基づいて計算されます。各アセットは個別に配置され、管理されます。システムの組織モデルでは、展開されたミッションのために集約的に、ローカルに、および世界各地に分散している倉庫を定義するためのすべての機能を提供します。

 新たな物資の補充は、利用者、物品管理官、購買部門がそれぞれの権限に応じて、いつでも手動で開始することができます。物資の補充は、必要とされる物資や装備品の性質に応じて、以下のいくつかの方法で行うことができます。

  • アセットの補充:このアルゴリズムは、(兵器)システムの構成一式に基づいています。構成ごとの使用予測計画と物資の履歴に基づいて、新しい物資を調達するための、または既存の物資を修理するための補充計画を提案します。
  • 他の修理可能な物資の補充:この方法では、新しい物資を修理/補充するための最適且つコスト効率の高い予測を提供します。物資のライフサイクルに基づいて、兵器システムごとに新しい物資の最適な割り当てや補充を計画します。
  • 消耗品の補充:組織全体の過去の消費量に基づいて、また物資(あるいは倉庫)レベルで指定された補充方法に応じて、新しい物資の調達要求を開始するさまざまなアルゴリズムを設定することができます。これらの消耗品は特定の入荷ポイントに到着し、入荷ポイントからプッシュまたはプルメカニズムで最適な倉庫に分配されるため、コストの最適化が図られます。

 全体の在庫レベルに応じて、後方支援部門はアイテムを再分配することができます。全体の在庫レベルが定義された運用レベルを下回ると、システムは担当の購買部門に通知し、サプライヤーに発注書が送信されます。また、アイテムが納品されると、内部ルートで組織内に送られます。

 このように、ILIASは状況に適した様々な補充ソリューションを提供しています。アルゴリズムの選択は、部品にシリアル番号が付けられているか、修理可能かどうか、履歴が残っているかなどの要因によって影響される場合があります。

ミッション遂行中の供給

 後方支援機能は、あらゆる種類のミッションにおいて、機器(航空機、船舶、車両)の即応性を確保している必要があります。ILIASは、ミッションが遂行されている間も、電話、衛星接続、または接続可能なスタンドアローン機能によって利用可能です。

 また、緊急性の有無にかかわらず、ミッション遂行中にオンラインで物資要求を登録することもできます。

 ILIASは、ミッション中の現地調達という選択肢も全面的にサポートします。このシステムでは、ミッションが完了するまで、現地の作戦実行地帯に物資を自動的に補充することができます。

調達とサプライチェーンマネジメント

 ILIAS調達(Procurement)モジュールは、調達サイクル全体をカバーしており、製造者、サプライヤー、契約、物資/サービスの要求、見積書、発注書、請求書の管理など、民間調達とFMS(Foreign Military Sales:有償援助)の両方で対応しています。このモジュールには以下の機能が含まれます。

  • サプライヤーに関連するあらゆる情報、供給された物資のカタログ、取引履歴を追跡します。
  • 物資やサービスの供給に関するサプライヤーとの価格協定、需要予測、販売条件を管理します。契約は内部予算と関連付けられ、これらの契約に対するコールオフ(個別発注)はすべて登録され追跡されるため、支出を完全に管理することができます。
  • 見積依頼書(RFQ)の作成、サプライヤーからの回答の登録、提案の比較・評価、最適な回答の選択を行います。
  • 発注機能:物資やサービスの発注書をベンダーに発行することができます。発注書が発行されると、倉庫内の予想在庫量が更新されるため、予測される在庫状況をオンラインで確認することができるようになります。
  • 納品書機能:ベンダーへの支払残高に影響を与えることなく、実際の在庫量を更新します。
  • 返品・修理機能:サプライヤーに返品された物品を追跡することができます。
  • 前払い機能:サプライヤーへの前払金や手付金を処理します。
  • 請求書処理機能:物品の受領が確認され、発注書と照合された後に、債務の支払いが実行されます(三者間照合)。これを受けて、外部の会計システムに財務取引が送信されます。
  • 物品の返品やその他の理由でサプライヤーへの支払残高を変更する必要がある場合、ILIASでクレジットノート(貸方票)を処理することができます。

 調達サイクルは、倉庫管理システムの活動と密接にリンクしています。こうしたリンクによって、特定のアイテムの使用を、一定の最大在庫レベルや年間最大購入数などに制限することができます。調達のためにアイテムを分類化することで、処理時間を短縮でき、個々のアイテムのトランザクションを統合することができます。また、調達プロセスの間、適切な承認レベルの品質文書を追跡管理できます。

返品の管理

 アセットが使用不能になり現場での修理が不可能な場合、サプライヤーに返品して修理を依頼することができます。この返品プロセスはILIASで完全にカバーされており、保証期間内/外の返品、保守契約の下での返品、臨時の返品といった状況で適用することができます。このワークフローはILIASによって管理され、修理から戻ってくる予定のアイテムに対してアラートや警告を表示します。

 サプライヤーがアセットを修理できない場合は、サプライヤーから別のアセットが提供されることがあります。こういった直接交換もILIASはカバーしており、複数の状態(新品、中古品)を考慮して物資を管理することもできます。中古品の場合、その履歴をILIASに読み込むことも可能です。

サプライヤーマスターデータ

 ILIASで管理できる企業には、製造者、運送業者、バイヤーなどがありますが、サプライヤーもその一つです。これらの企業はすべて、CAGEコードで識別することができます。企業の詳細情報には、複数の住所、連絡先、銀行情報などが含まれます。また、これらの詳細を外部システムからアップロードして、NATOコードのシステムと同期させることも可能です。

 お客様の組織構造は、機関、部門、整備工場、倉庫といったレベルまで、レベルの数に制限なく簡単にモデル化および変更することができます。これらの組織要素は、それぞれ1つまたは複数のアドレスを持つことができます。

 セキュリティメカニズムにより、個人が組織内のどこにいて、どのような役割を果たしているかに基づいて非常に細かい権限レベルまで設定することができます。

 当社のシステムでは、名前、スキル、階級、職位、資格、連絡先、勤務地、雇用期間、ローテーション/シフトなど、さまざまな従業員情報が利用可能です。

発送・輸送

 「運用」セクションでご紹介したように、ILIASには充実した発送・輸送機能が備わっており、サプライチェーンの最適化にも利用できます。また、フレイトフォワーダー(貨物利用運送事業者)との連絡、ITARやその他の輸出管理規制の遵守、税関への対応なども可能です。

主要軍事サプライヤーとのオンライン接続

 軍用システムに関連する情報は、調達や修理の際、防衛関連の請負業者とセキュアに交換されます。この機能は、多くのサービスを請負業者に委託している防衛機関にとって重要です。

 修理元(SOR)との連携としては、故障ログや軍用システムの使用に関する完全な履歴をすべての関係者が利用できる共同修理活動が最も一般的に行われています。

FMS対応の標準インターフェース

 ILIASは、米国政府とのFMS(Foreign Military Sales:有償援助)に対する標準インターフェースを内蔵しており、FMS案件を管理することができます。このインターフェースは、MILSTRIPフォーマットに完全に準拠しています。このため、ILIAS は、FMS案件の修理や発注に関する正確な情報を提供することができます。

 NATOコードデータベース対応の標準インターフェース

 ILIASは、NATOコードデータベース(NMCRL)から、NATOストック番号(NSN)、関連する製造者(部品番号)、サプライヤーを自動更新することができます。

 NATOにNSNのユーザーとして登録された国について情報変更があった場合、変更を自動でダウンロードするように設定することができます。

ドキュメント管理

 ILIASは、ドキュメントをコア資産として管理します。技術文書は、それ自体が装備品のコンポーネントであるかのように取り扱われ、該当の装備品に直接関連付けることができます。

 ドキュメントの改版や構成変更の履歴は記録され、厳密に管理されます。

 ドキュメントの作成は、ILIASを介してまたUSBメモリー内のデータについて要求することができ、FMSとの連動により、新規ドキュメントと発注書が自動的に作成されます。後方支援部門は、ドキュメントを受領し必要な輸送を手配します。

 ILIASでは、作業指示書、手順書、地図、サービス・ブリテン(SB)、規制、証明書、検査チェック、さらには設計情報、試験・校正手順など、あらゆるドキュメントを処理することができます。ドキュメントは、機能、部品番号、アセット番号に基づいて、ILIAS内のあらゆるアセットにリンクさせることも可能です。また、ドキュメントを適切な修正プログラムとリンクさせることもできます。

 各ドキュメントの内容は、データベースに保存したり、イントラネットの任意の場所にリンクしたり、インターネットプロバイダに直接リンクしたりすることができます。紙ファイルやマイクロフィルムなど電子化されていない文書のコピーは、文書管理者や兵器システム管理者の管理下で在庫分配メカニズムに従いエンドユーザーに提供されます。こうして、ILIASのユーザーは、技術文書、図面、図解、コンピュータ支援設計レポートなど、ドキュメントの種類を問わず、永続的にドキュメント情報にアクセスすることができます。

ILIAS Guideを介した技術文書

 「作業の実行」セクションで説明したように、ILIAS Guideでは、整備士は技術文書の実施手順に「チェック」を付けることができます。この機能は、技術文書のソースをILIAS Guideモジュールに読み込みことでエンドユーザーが利用できるようになります。

処分

 処分対象の物資は、ILIASで相応に処理されます。次の画面は、処分が提案されているすべての在庫品の概要を表示しています。物品管理官、作戦司令官、部隊指揮官、または倉庫管理者は、この画面で物資の処分ケースを開始できます。

図15:物資の処分

 その次のワークフローで、物品管理官や部隊指揮官は、開始したケースについて処分決定の選択肢を指定します。各ケースについて、1つ以上の決定を選択することができ、その決定に対する補足も含むことができます。最後に、物資は処分されます。

 さまざまな設定を適用して、例えば、ユーザーが一度に250件以上の処分を選択する場合などのリスクを管理することができます。

 物資を処分する理由は以下の5つに分けられます。

  • 「不具合」を示すコンテナに保管されている物資の処分
  • 「処分対象」を示すコンテナに保管されている物資の処分
  • 過去に製造中止になった物資の処分
  • 使用できなくなった物資の処分
  • 使用期限切れのロットの一部である物資の処分

 物資の種類ごとに、以下の処分クラス(DISP CLASS)のいずれかを設定する必要があります。

  • クラスA : 物品管理官の承認が必要
  • クラスB : 部隊指揮官の承認が必要
  • クラスC : 倉庫管理者の承認が必要

 他の組織に売却されたコンポーネントやシステムを処理するために、処分の選択肢として「売却」の項目がILIASに追加されました。