現在、多くの防衛組織は運用上の差し迫る要求と予算圧縮に直面しています。こうした状況の中で複雑さを軽減しながら管理能力を高めるという重要な要件に応えるべく、防衛組織は過去数十年間にわたってITソリューションに多額の投資を行ってきました。しかし多くの場合、防衛業界におけるERPプロジェクトは、予算超過・長びく遅延・限られた機能の実現という様相を呈しています。
数々の調査では、民間産業界のために設計されたERPを軍組織に適用した場合、ERPに組織を適応させるという確立された手法が機能しないことを示しています。
- 「軍には、民間や他の政府組織にも存在しないプロセスがあります。これが、対象の環境で多くのレガシーシステムが残っている理由です。ERPソフトウェアが軍で適用されている場合、ERPには軍のすべての要件を満たす能力が備わっている、あるいは、ビジネスプロセスやポリシーのカスタマイズと変更によって要件を満たすことができるという誤った前提を基に行われています。」[1]
- 「ERPは『ベストプラクティス』の適用を保証しません。ERPは、防衛業界向けの準備が整っているソリューションではなく、未完成のパッケージであることが分かってきました。」[2]
- 「ERPシステムのコア機能は、さまざまなサブプロセスの管理をサポートすることはできますが、プロセスを制御したり管理するものではありません。軍隊では、このコア機能は、既存のレガシーシステムよりも大幅にサポート範囲が少なくなります。したがって、軍隊は、プロジェクトの遂行や特別なプロセスを制御するために、今後も古いシステムに頼り続けるでしょう。そのため、レガシーシステムを交換することはできません。」[3]
[1] Institute for Defense Analyses, Assessment of DoD Enterprise Resource Planning Business Systems, February 2011 (IDA Paper P-4691)
[2] Translated from Dutch. Final Report on Project SPEER, the Implementation of SAP ERP for the Netherlands Defense Forces, Netherlands Ministry of Defense, November 2013 (ISBN 978 90 1257 9711)
[3] Translated from Dutch. Letter of the Netherlands National Audit Office (Algemene Rekenkamer) to the House of Representatives, Netherlands Parliament on Project SPEER, the Hague, January 16th 2014 (document 31 460)
当社の想い
ILIAS Defense Platformは、軍組織のコアプロセスをサポートするために特別に設計された市販ソフトウェア(COTS)スイートです。1990年代半ばより、ILIAS Defense Platformは、常に国際軍事規格を重視しながら、お客様の仕様を満たすべく改良を重ね、成長してきました。
現在では、あらゆる軍組織にシームレスに適合し、迅速かつ確実な実装に対応しています。また、プロジェクトや変更に伴うリスクを抑えながら、手頃な予算で効率を向上させる機会を軍組織に提供しています。
そのため、ERPではうまくいかなかった、既存のレガシーシステムの取替えを可能にします。実用的には、ERPが一般的なプロセスのサポートを継続し、軍固有のプロセスをカバーするためにILIASを追加することにより、ERPを補完することも可能です。ILIASは、SAPまたはOracleのインターフェースを使用するお客様にも対応しています。
一般に、軍隊の最低限の能力(つまり基礎)に到達して、実際に価値が生み出されるまでには、時間と労力がかかると理解されています。真のエンドツーエンドのプロセス管理、リアルタイムの分析と制御、統合的なフリート管理機能を有することが最善であると認識されていますが、私たちILIASは、真の前進という意味では、統合的なフリート管理が最小限必要な能力であると考えています。
世界中の様々な軍の代表者によると、以下のようなことを彼らは実際に経験しています。
軍の代表者達は、フリートのリアルタイムな状態、在庫・業務・後方支援の状況、および理想的な配備システムを示してくれる信頼性の高いシステムが無いと訴えています。運用、整備、補給、調達、予算はそれぞれ分断されており、時には部隊さえも分断されている場合があります。しかし、これはIT化の資金不足によるものではありません。商用ERPを実装するプログラムには多大な予算が費やされていますが、限られた結果しか得られていないのです。
また、内部IT部門は、さまざまな問題だらけのレガシーシステムを抱えています。場合によっては、ITの価値が認識されず、MS ExcelやMS Accessなどのローカルなエンドユーザーコンピューティングが使用されています。このような環境では、盲点が生まれ、意思決定が遅れ、時には危険な状況を引き起こしかねません。
当社は、設立当初から軍と協力して開発を行ってきました。90年代半ばより、当社の最初の顧客であるベルギー国防省は、実際の防衛上の課題から生じたコアな要件を提示し、私たちはその解決に努めてきました。その後、当社の軍顧客基盤は拡大し、20年以上にわたりILIAS機能の進化を牽引してきました。私たちは、ユーザーコミュニティと積極的に協力してロードマップに優先順位を付け、R&D投資が顧客価値を真に向上させることをお約束します。
ILIASは、短期間で実装することができます。私たちは常に、対処すべき実際の問題を抱えている特定のフリートから実装を始めます。最初の実装は、年単位ではなく数カ月で実施され、同時に組織にノウハウを教育します。得られた成功体験と能力に基づいて、他のフリートを追加していきます。この段階では、顧客の能力が高まるにつれて私たちの役割は減少していきます。このように、実装は段階的に行われ、すぐに価値が得られるようになります。
ILIASの管理は、平均で5〜15人ほどのチームで行われます。
ミッション駆動型の後方支援
「すべてはミッションから始まる」 これは、ILIAS Defense Platformの中核的なパラダイムであり、従来の多くの市販ERPが苦労している点です。
最も効率的にミッションを成功させるためには、作戦司令官に後方支援情報を正確に提供できる必要があります。同様に、後方支援隊長は、装備品の使用履歴および使用計画に関する正確なフィードバック情報を必要とします。
スタッフ機能は、装備品を運用するための条件を定義し、ILIASに目標を設定します。具体的には、これは、タスク毎の必要な訓練レベル、予防整備スキーム、予算レベル、補用品補充アルゴリズムの適用性など、システムでパラメータを設定することを意味します。
これらのパラメータに基づいて、ILIASはプロセスの実行をサポートします。ILIASのサポートにより、人と装備品の最高の組合わせで運用が行われます。部品の使用が一定の閾値に達すると、部品、スキル/能力、(テスト)機器、工具、設備などを必要とするタスクを含む作業指示が生成されます。適切なスキルの技術員が招集され、必要な部品が補充され、工具の校正が行われます。また、特定された修理作業が計画・スケジュール・実施され、コンポーネントは作業指示に基づき修理のために補給処や修理会社に送られ、部隊間や修理会社との間の輸送状況がトレース/追跡され、同時に、関係予算も記録され、財務システムとの連携が行われます。
ILIASはプロセスの実行をサポートする一方で、一貫性のある正確なデータを生成し、エンドツーエンドの防衛プロセスにまたがるデータを1つのデータベースで提供します。このデータベースは、防衛組織にとって適切な形式でデータを保持するように設計されています。
相互運用性
ILIAS Defense Platformは、組織全体の情報を統合して監視、分析する機能を提供します。そうすることで、当社のプラットフォームは軍隊間の相互運用も可能にします。
ILIAS Defense Platform創設の立役者であるベルギー国防省は、90年代初頭、特に少ない予算制限の中で、統合軍による共同作戦が必要であることを認識していました。ILIAS Defense Platformは当初から、陸、海、空の異なるユースケースまたはその任意の組み合わせであらゆる軍隊をサポートするように設計されてきました。
例えば、以下は、主要作戦基地(MOB)司令官の一人が数年前に私たちに語ったことです。 「NATO TACEVALが近づいた時、開始直前に、私たちは多くの暗号デバイスが不足していることに気づきました。ILIASを確認し、組織全体としては十分な暗号デバイスを持っていることが分かりましたが、デバイスは陸軍倉庫でジープに取り付けられていたのです。ILIASを使用して、これらのジープをMOBに派遣し、暗号デバイスを使用することができたため、TACEVALでは非常に満足のいく結果を得ることができました。ILIASがなければ、暗号デバイスの確保を間に合わせることはおろか、陸軍にデバイスが存在することすら分からなかったでしょう。」
防衛組織のコアプロセスは、部隊が任命されたミッションを効果的に遂行することができるよう、あらかじめ定められたレベルの即応性を整えることを目的としています。このためには、組織は望ましい能力を生み出すために、手順に従って作業する必要があります。
まず、本部レベルでは、目標をさまざまなスタッフ機能によって定義します。即応性を実現するための主なリソースを管理するために、ILIASでは以下のスタッフ機能をサポートしています。
- 3 – 運用
- 4 – 後方支援
- 7 – 訓練
- 8 – 財務
完全なサイクルを完成させるために、データが情報に変換されます。ILIASの Defense Capability Management(防衛能力管理)モジュールは、前述のスタッフ機能の意思決定プロセスをサポートするために、包括的かつ実用的な方法でこの情報を提供します。
利用可能なリソースから価値を引き出せるように、OODAループのObserve(観察)、Orient(状況判断・方向づけ)、Decide(意思決定)、Act(行動)のプロセスがあらゆるレベルで確立されています。