筆者:濱田真輔

 唐突ですが、皆さまは上場されている株式をお持ちでしょうか? ネット証券が台頭し、金融庁としても少額投資のための非課税制度である「つみたてNISA」を推進するなど、手軽に株を購入できる時代となりました。私もいくつかの銘柄を保有し半年に一回報告書が送られてきますが、何と言っても楽しみは配当ですね。

 その報告書の内容ですが、ここ数年で掲載されている内容が大きく変わっていることをご存じでしたか? ピンと来られた方は配当だけでなく世の中の流れに敏感で、SDGs、ESG投資等にも興味をお持ちになって報告書を読まれているのかもしれません。

 従来当コラムはサイバーセキュリティに焦点をあてた内容を取り上げていますが、今回はより広い視点で「企業のサステナビリティ」についてお話しさせていただきます。

 マネジメントの父として知られているピーター・F・ドラッカー氏は「事業の目的は顧客の創造である。そして、組織の究極の目的は継続することである」と言っています。確かに組織は存続するために製品・サービスを提供し、顧客を創出し、リピーターになっていただく努力を続ける必要があり、それらの製品・サービスはその時々のお客様ニーズに合ったものを提供するために、日々研究・開発(R&D)に向けた投資を繰り返していく必要もあります。

 10年ほど前まで企業が発行する年間報告書は、前年の財務情報および過去に実績を上げた成功事例を大きく取り上げていました。企業としては過去の実績の延長線上に未来はあるという前提で報告書は作られ、投資家もその過去の実績を元に投資判断を行っており、それで従来の報告書としての役割は十分果たしていたのです。

 ところが、企業がお客様のニーズを獲得し、その結果産み出した製品・サービスを市場に提供していれば良い時代から、現在の社会環境は大きく変わってしまいました。世界は気候変動、人口爆発、資源不足、水不足、エネルギー・燃料問題、貧富の格差拡大、食糧問題など様々な課題を抱えており、「その中での企業の課題解決への姿勢(存在価値)」を示す必要が出てきました。

 外部環境の変化をどのように理解し、今後の企業活動をどのように行っていくかについて報告するという、新たな顧客ニーズが出てきたのです。

 現在、企業が作成する報告書は統合報告書と呼ばれ、従来の財務実績情報に加え、企業の今後の姿勢を紹介する非財務情報を掲載することが一般的になっています。非財務情報とは、財務情報に現れない無形資産(人材、組織、R&D、特許、ブランド等)、中長期的な企業経営(持続可能性)に関する情報のことを指します。

 その中でも環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に対する企業の姿勢は、ESG投資という語が表すように、経営者だけでなく投資家からの視点でも重要な要素となっていると言えるでしょう。

 報告書によく出てくるもう一つの言葉であるSDGsは、2014年9月に国連開発計画が立案した「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」で、17のテーマ、169のゴールから成っており、今や色とりどりのマークを街中に見かけることができるようになりました。

 ESG投資とSDGs、両方の語に共通するのが「持続可能:サステナビリティ」です。SDGsの169のゴールを達成するには、地球規模の膨大な量の情報をICTで処理する必要があります。特にデジタル格差、サイバーセキュリティ、データープライバシーの領域は私たちが意識すべき課題であると考えます。

 ただ、意識するだけでは物事は簡単には解決できません。昨今よく耳にするDX推進といった世の流れから、デジタルに縁遠い方が感じられるのは「自分たちの生活が、知らない所で勝手に操られてしまうのではないか」という大変な恐怖感ではないでしょうか?

 実際、連日の振り込め詐欺についても、デジタルに無知な高齢者が主なターゲットになっていると報道されています。またランサムウェアによる攻撃も、デジタルに不得手な中小企業をターゲットとしてシステムに取り付き、そこからTier1企業にまで遡って侵入された事例が報告されています。

 このような状況を解消するには、私たちのDX推進によってデジタル格差を広げることに加担するのではなく、格差をなくすことを目指し、人々が幸せな生活ができるような持続可能な社会の実現に、努めていかなければならないと考えます。

 その観点から、英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー資格を取得させ、企業の本質的な存在意義を常に問いながら事業活動を行っている日本の企業一覧は、CSR資格講習説明 | サステイナビジョン (sustainavisionltd.com)で、ご覧になれます。

 時には広い視野でサイバーセキュリティを俯瞰してみるのも、安心安全でサステナブル(継続的)な社会を作るために効果的かもしれません。

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